*
「チェス、起きろ」
低く、静かで冷たい声がチェスの部屋に響いた。
気のせいにしては、やけに耳に残る。
呼ばれたチェスは目を覚まし、気のせいかと思って室内を見渡したときに廊下の光を受けて逆光になっている黒い男を見つけ、それが気のせいではないことを知る。
まだ開きづらい重たい瞼をこじ開けて、ベッドから身体を起こして男を見上げた。
「何、リオン……何かあった?」
黒いシャツ、黒いズボン、黒いベルト、黒い紐タイ、黒の外套と言えるマント、黒いブーツ。眼鏡などのアクセサリー類はシルバーだがそれ以外は全て黒を身につけているリオンは逆光を受けずとも元から黒く、寝室の電気をつけたことで黒以外の色になったのはその白い美貌だけだった。
微かに緊張を見せる、普段とは少し違う雰囲気にチェスは流石に寝ぼけることも睡眠妨害されて憤慨することも出来ない。
今二人は町外れの一軒家にその身を潜めていた。
毎日を暇に過ごしながら時たま地縛霊の未練を解消してやり、時たま食べたりしながら、リオンは本を読み、チェスは紅茶を入れる。何十年も変わらぬ日々。
日本にいた頃と変わったのは広い家だろうか。書斎も広くなり、チェス専用の部屋も与えられた。が、特にそこですることもなく寝るだけの部屋となっている。店を切り盛りしていたときよりも余計に暇になっている。
まだ夜も明けぬ真夜中にやってきたリオンに連れられて、チェスは寝巻きのまま家中の電気をつける。
妙な緊張感に、控えめにチェスは問いかける。
「どうしたの…?」
「…別れだ」
「チェス、起きろ」
低く、静かで冷たい声がチェスの部屋に響いた。
気のせいにしては、やけに耳に残る。
呼ばれたチェスは目を覚まし、気のせいかと思って室内を見渡したときに廊下の光を受けて逆光になっている黒い男を見つけ、それが気のせいではないことを知る。
まだ開きづらい重たい瞼をこじ開けて、ベッドから身体を起こして男を見上げた。
「何、リオン……何かあった?」
黒いシャツ、黒いズボン、黒いベルト、黒い紐タイ、黒の外套と言えるマント、黒いブーツ。眼鏡などのアクセサリー類はシルバーだがそれ以外は全て黒を身につけているリオンは逆光を受けずとも元から黒く、寝室の電気をつけたことで黒以外の色になったのはその白い美貌だけだった。
微かに緊張を見せる、普段とは少し違う雰囲気にチェスは流石に寝ぼけることも睡眠妨害されて憤慨することも出来ない。
今二人は町外れの一軒家にその身を潜めていた。
毎日を暇に過ごしながら時たま地縛霊の未練を解消してやり、時たま食べたりしながら、リオンは本を読み、チェスは紅茶を入れる。何十年も変わらぬ日々。
日本にいた頃と変わったのは広い家だろうか。書斎も広くなり、チェス専用の部屋も与えられた。が、特にそこですることもなく寝るだけの部屋となっている。店を切り盛りしていたときよりも余計に暇になっている。
まだ夜も明けぬ真夜中にやってきたリオンに連れられて、チェスは寝巻きのまま家中の電気をつける。
妙な緊張感に、控えめにチェスは問いかける。
「どうしたの…?」
「…別れだ」


