千治君を引きずって水道があるところ
に来て一生懸命千治君の手に水を当てる。
「沁みる?」
千治君、さっきから何を見てんだ?
ずっと自分の手を見てるけども。
「いや、・・・」
千治君、そんなに怪我させたこと
怒ってるんだね!!
悪かったよ。
これはあたしが確実に悪いさね。
「ごめんね、何か不便があったら
手伝うから言って。」
血の着いたハンカチを洗って、
もう一度傷口に当てる。
血が止まってきた。
浅い切り口で良かった。
こんなに綺麗な手を傷つけちゃう
なんてあたし何たること!!
世界中からの非難を浴びるに
違いないよ。
ひよこの絆創膏を貼る。
傷口に丁度合うヤツで良かった。
「ハンカチ」
千治君の綺麗なビー玉みたいな
茶色い瞳が揺れる。
「えっ?」
可愛いひよこさんハンカチが
グロテスクな赤色ハンカチに
変化しちゃった。
「あ、気にしないで。
ひよこさんのハンカチはまだまだ
たくさんあるからそれより大した
ことなくて良かった。」
千治君と一緒に花壇に戻る途中だった。
千治君に頭を撫でられた。
「怪我してないか?」
遅くないかって思ったけど、
口を噤んだ。
心配されるのはちょっぴり
心に温かいものが流れてくるよ。

