馨がナルを押し込める。

こういう時の馨は本気で押え込んで来る。

恐ろしい男だ。

「んだよっ。

俺らが気に掛けてやりゃいいんだろ?

見放すぐれぇなら追っかけて、

礼しようなんざ思わねぇよ。」

慶詩がいつも以上に必死そうだった。

そんな顔を見るのも中々ねぇな。

プリントを届けに来たヤツの

顔を拝みに行くとか言って

特徴を聞いてる慶詩を見た。

アイツは今時のヤンキーには

似合わねぇぐらいの義理堅い男だ。

「お、俺だって・・・アイツ意外と好きだ。」

ハッとしたかのように言い出したユウヤ。

「あれれ、あの子に恋しちゃった?」

村田がボールペンをくるりくるりと回す。

弄ぶようにボールペンを持ち直す。

「ち、ちちちちちちちちちげぇ」

ユウヤ、力みすぎだ。

ちげぇのは知ってるからよ。

この短期間にありえねぇんだよ。

「そんで、さっきから口閉ざしてる

お前はどうなの?」

相沢が京を見つめる。

ただただひっそりと立ち尽くす

京は相変わらずの無口だ。

「・・・・面白いと思う。」

けど、そんなヤツでさえ気に入ってる。

まだ、分からねぇじゃん。

あの子が振り切りたくなったら

ちゃんと逃がしてやればいい。

いつでも逃げ道作ってやれば

心置きなく付き合ってられる。

恐れる理由が何であれ一度伸ばされた

手を掴まないわけねぇんじゃないの?

「心配なら見張ってりゃいいじゃないの?

万が一あの子が泣くようなことになったら

どうせあんたらが出しゃばって来るんだろう?

クラス一緒になっちまったんだから仲良く

するっきゃないだろう。」

思ったことを言っただけだったけど、

かなり遠まわしだった気がした。