Hurly-Burly 【完】


決して、簡単なことじゃなかったはずだ。

年下の俺たちに頭を下げるってのは

相当プライド捨ててる。

「俺からも頼む。」

村田までが頭を下げる。

何故そこまで出来るのか分からなかった。

たった一人の女子高生に肩入れしすぎ

じゃねぇのってその時は思った。

「あの子を見捨てるぐれーなら

もう関わってやるな。」

それが切実な願いとも言えた。

「見捨てるだぁ?」

慶詩が眉を顰める。

「お前らと居てあの子が危険な目に

あったらお前らアイツを助けるか?

絶対、アイツを見捨てねぇって誓える

ってのか?言っちゃ、悪いがアイツは

とんでもない女だよ。自分から助けろ

とは口が裂けても言わねぇのよ。

頑固で人一倍無茶なことしやがる

暴走列車と同じだ。そんなアイツを

毎度気遣ってやれるのか?」

相沢がツラツラと言葉を繋げる。

不安そうに見えるその瞳は、

さっきあの子に見せる意地悪な

ものではなかった。

確実にあの子を想ってる目だった。

「お前はどうなんだよ。」

千治が興味なさそうに窓から、

走って行くあの子の姿を見る。

「分かってて全部やらせようと

して、何がしてぇんだ?」

千治にしてはいいこと言うと

思って黙った。

「あの子は俺にとって大事な子なんだ。

他の誰でもねぇ、代えのきかねぇぐらい

大事な存在だ。苛めてやるのは愛情の

裏返しってヤツだ。」

それを本人の前で言ったことあるって

言うならあの子はどんな表情でそれを

聞くんだろうか?