Hurly-Burly 【完】


千治は欠伸をしながらその挑発を振り切る。

「お前も釣れねぇな。」

千治が挑発に乗らなかったことに

心底つまらなそうに口を尖らせる相沢。

「俺は別にお前らが嫌いで言ってる

のと違うんだよな。

むしろ、同じ匂いがするとぐらいに

思っちゃ居るさ。

けどな、こればっかりは賛成出来ねぇのよ。

ヒヨリはああいうヤツだからな。

気になるのも正直分かるんだわ。」

煙草の煙をふーと吐きかける相沢。

その瞳が確実にキツクなった。

「アイツ、勝手に泣くんだな。

知らねぇ内に自己完結させるんだ。

これ以上踏み込むなって言いてぇな。

さすがに、あの子に泣かれるのは

正直きつい。」

相沢が瞳をを伏せる。

村田が眼鏡を外して、目頭を押さえる。

「お前らが何を思って気に入ったか

知らねぇけどあの子だけは止めとけ。」

それは関わるなという意味だった。

村田が言う止めとけが何故そう言う

のか分からなかった。

「理由を言え。」

千治の気怠そうな言い方はイラつき

が乗り移ってた。

「けどな、アイツがあんなに笑ってる

ところ見たら言えねぇじゃねぇの。

自分が悪いって謝るあの子見たら

さすがに目頭が・・・」

相沢の演技に付き合わされる俺ら、

糞下手くそだと思う。

「何が言いてぇかはっきりしろや。」

千治が近くにあった椅子を蹴飛ばす。

八つ当たりにされた椅子を無念に

思いながら静かに俺も睨みつける。

「頼みがある。」

コイツがそう言って頭を下げる理由が

正直分からなかった。