家の品格を守れた。
それだけでも良かったと思った。
後の話で主席で合格した子がその子で、
他の学校に主席で受かったと聞いた。
何がその子に心惹かれるものがあったのか
分からなかったけどもう一度会いたかった。
せめて、もう一度会ってありがとうを伝えた
かっただけだった。
入学式から時間は随分と早く過ぎていく。
学校にも慣れてきて習い事もまた初めた。
自慢ではないがあたしの家はそこそこ大きい
企業で、知らない人は少ないと思う。
たまにパーティーが開かれたりすると、
父や母と一緒に出席する。
愛想笑いは得意な方だ。
そんな日々が続けば自分を見失うのも
時間の問題だった。
あたしは何をしているんだろう?
こんなことをしていていいのか。
ううん、家のために決められた道を
歩くのが当然だった。
そう言い聞かせることに徹底してた。
全て自分の思うことと反対でも頷いて
やりたくもないことを習い事をして、
成績は落とさないように勉強をして、
パーティーでは笑って過ごす。
そんな毎日に自棄でも起きて飛び出した。
自分で決めたことだからしょうがないって
何度も諦めてた。
いつもは通らない河原に行って土手で
参考書を読んでた。
知らない内に隣が騒がしくてイライラした。
人が勉強してる時に何なの?
犬と戯れてる暇があるならあたしと代わってよ。
そのくだらないぐらい犬と笑いあえる時間を
あたしだって欲しかった。
だから、半分八つ当たりだった。
「・・・・煩い」
無意識だった。
それでも、イライラしてたのが声で
伝わったのかキョロキョロ挙動不審に
なってた。

