女の子に手を振る彼に今ここで花壇の煉瓦
を投げつけていいだろうか?
「やる気がない人に手伝ってもらっても
迷惑なだけです。あたしのことはどうか
ほっといていただけませんか?」
はっきり言って余計な仕事が増えた。
お花さんも元気をなくしてぐったりしてる。
「えっ?あ、ヨウコちゃんー。」
話を聞け!!
もう、てんてこ舞いのあたしと
ひっそりついてきたであろう2人。
そこだけくっきりと分かれ目があるかの
ように穏やかな空気が・・・
「流れてる場合じゃないっ!!」
つい、言葉に発してしまった。
それが何よりも彼らをびっくり
させたらしい。
伊織君は女の子に手を振りながら
あんぐりと口を開けてて、金髪ヤンキー
だってホースを地面に落としている。
わいわい騒がしくしていたユウヤ君は
声すら出せなくなったらしくて、呑気に
木の木陰でのんびりしているチハル君と
カオル君すら目を丸めてあたしを見ている。
そして、そして、一番先に手伝うと言った
ナル君はジョウロを落として現実逃避行
をし始めた。
「最悪っ!!」
あたしとしたことが一番やってはいけない
場面で脳内ストーリーにウキウキしてる
場合じゃなかった。
この場を乗り切る術は見つからない。
「い、今のって?」
ナル君がダーッと走って来る。
それはもうカモシカのような走りっぷりに
見惚れていた。
そのせいかもしれない。
あたしに向かってきてるだなんて予想だに
しなかったのは。

