「ヒヨリン、ほっぺたがっ・・・」
あたしの頬を見て床に転がる再起不能者を
踏みつけるナル君にギョッとした。
「しかし、ビックリしちゃったじゃねーの。
何かやらかしてるとは思ったけど本当に女の子?」
伊織君っ!!
女って認めてよ。
「おめータマついてんじゃねーよな?」
きぃぃぃぃっー!!
「ライオンのゴールデンボールなら庭の
どっかに転がってる。」
それにみんなからの一斉の視線にちぃー君の
背中に逃げた。
「あたしではない!!
断じてあたしが毟り取ったわけではない!!
兄ちゃんがそれを持っとけば変な人が着いて
来ないっていうお守りとかいう・・」
そういや、言ってたな。
変質者が多いという日本が心配ですという
エアーメール。
「ったく、おめー本当に信じられねぇー。
15人ってとこか?1人でそんな数相手
してよく無事だったな?」
慶詩なりの心配をしてくれていると
それは受け取るぞ。
「ひ、必死だったし・・・ちぃー君が
来た時はさすがにもう無理だと思った。」
腕が死んだと思う。
「けど、来てくれて良かった。
心の底から感謝を致します。
ホッとして力が抜けて・・・実はいうと
ちぃー君が来る前に腰が抜けて死ぬかと
思ったから・・・こわっ、怖かったっ。」
ああ、あたしは馬鹿だよ。
逃げればいいのに逃げなかった。
逃げて誰かを呼ぶことなんて考えれば
出来たことなのに肝心なところでボロを
出して殴られただけで済んだのが嘘みたいだ。
ハイエナのように群がる男たちを見て足が
竦んだじゃないか。

