それも束の間だった。

「やはり、帰って下さい。

というよりは、一生あたしの目の前

から消え去ってください。」

確かに、そんなうまい話があるわけ

なかった。

手伝いたいって気持ちだけじゃ駄目

なのを思いっきり知ってしまった。

花壇を水浸しにされちゃこっちの仕事が

増える一方だ。

お花さんたちも急な大洪水に驚きを

隠せないでパチクリさせてる。

いけない、地球の危機だと勘違い

してお花さんたちを怖がらせてる

かもしれない。

脳内で繰り広げられるあたしのパニック

状態に誰かが気付くはずもなく。

「ぎゃはっ」

あなたは笑うことしか出来ないのかと

あのブルーの綺麗なメッシュが入った

男を見てため息を吐く。

そして、金髪ヤンキーマジで死んでほしい。

何を勝手にホース持ってバシャバシャと

水溜りを作ってくれてるんだ?

花壇に池でも作る気なのか?

「何だよっ、手伝ってやってんじゃんかよう。」

手伝う気があるのかすら分からん。

むしろ、遊んでるとしか思えない。

あたしの仕事を増やしてくれてる

気がしてならん。

「まず、水を止めなさい。」

モカブラウンの髪をサラサラと靡かせ

ながら水道管を破裂させるぐらいに

蛇口を捻る彼を見てため息すら出なかった。

流し目であたしを見つめる様と言ったら

フェロモン垂れ流しのド変態としか

思えない。

登校してくる女子生徒がキャーキャー

言う声が聞こえて激しく頭を押さえて

この人たちに消えて欲しいと思った。