Hurly-Burly 【完】


そう思った時には佐藤君が拳を握ってた。

「立花っ、俺は行く。

多分、何の力にもなれない。

っけど、立花はまだここに居てくれ。

最後まで、守らせて欲しい。」

掃除用具はカウンターの後ろにあるから

多少物音を立ててそれを開けても明香里ちゃん

に群がる男たちが気付くわけもなかった。

そう言われて佐藤君と掃除用具から出て

カウンターの後ろに隠れた。

「でもっ、・・・」

「立花は女の子だ。

こういう時は、男が守らなきゃ駄目なんだ。」

佐藤君はやっぱり勘違い男だよ。

こんな時に女も男もないよ。

それでも、佐藤君は最後まで爽やかに笑った。

戦場に向かう夫への最後みたいだった。

『気を付けて、無事で帰って来て。』

『ああ、すまない。』

赤紙の送られてきた夫を送る妻の気持ち

になりきってた。

脳内ドラマを繰り出すあたしは現在の

状況を分かっているのか?

「もしものことがあったら、やっぱり

立花は逃げて欲しい。

俺はどうなろうといいんだ。

でも、立花女の子だから怪我させられない。

隙が出来たら逃げてくれよな。

俺がどんなになろうと振り返らず走れ。」

そんな男らしいこと言われて頷かない

方が女の子じゃない。

分かったよ、佐藤君。

佐藤君はすごい勇敢だったと語り継ごう。

意を決した佐藤君が出て行った。

明香里ちゃんの泣き声が聞こえる。

「・・・んやぁっ・・・」

もう無事で帰ることは捨てた佐藤君。

やっぱり、佐藤君は人が良すぎる。

そんなんじゃ、普通の女の子は惚れちゃう

と思うんだ。