乱雑に置かれた雑誌とか、灰皿の多さとか
その部屋の中はとても綺麗とは言えない。
おまけにたくさんあるお酒の瓶は数えられないほど
カウンターに置いてあって古ぼけたその部屋は
潰れたバー状態だった。
あたしと佐藤君が入ってきた方とは違うもう
一方の扉がガタンと言って開く。
ゾロゾロと入ってくる足音に言葉にならない
恐怖を感じた。
あたしは間違ってたのだろうか?
明香里ちゃんが気になってたとは言え、
こんなところに入ってきちゃ駄目だった。
兄ちゃんにだってマミーにだって言われた
じゃないか。
それに、ちぃー君も行くなと言ってた。
北地区4番街のお店。
それはもう取り返しのつかないこと。
どんなに願っても夢となってくれるはずもない。
「お願いします、あたし・・・ないと気が
狂いそうになっ・・・」
その時、あたしたちが入った扉から
声が聞こえて佐藤君と見つめ合った。
「金は持ってきたのか?」
偉そうにソファーに座った男が
ニヤニヤ笑ってた。
掃除用具の小さな隙間から見える光景は
ありえないぐらい非日常的だった。
これは何かのドラマを見ているのかしら?
昼ドラでもこんな感じだったかな。
泥沼な関係とかよくやるってマミーが
言ってたけど、これ・・・明らかに
ヤバいとしか言えないよ。
「一応、出せるだけのは・・お願いします。
それ・・・下さい。・・早くっ」
何を欲しがってるのか明香里ちゃんの真っ青な
顔を見てドキリと胸が痛んだ。
早く、気付いてあげれば良かった。
苦しんでいたのかもしれない。
その青い顔が何よりもSOSのサインだった
のだろうと思うと自分の無知さにイラついた。

