確実にどこもかしこもガラの悪いチンピラ
が居るようだった。
お酒の匂いにクラクラしそうだった。
煙草みたいなそうじゃない煙にカーディガンで
口元と鼻を隠した。
佐藤君にもジェスチャーで教えた。
すごく気分が悪そうだったから。
足が竦むほどイカツイ人に何度も
会ったし、声を掛けられたけど絶対に
作り笑いを忘れなかった。
いい気になった酔っ払いが多かった。
ニコリと笑えば奥へと通してくれた。
女は愛嬌と度胸よ!
母さん、あたし今実行に移してるよ。
「立花ってすげーな。」
佐藤君は何を思ったのかそう言い放った。
あたしは佐藤君ほど度胸はなかったと思う。
クラスメイト一人に走り出す佐藤君ほど。
「強い女の子って感じだな。」
いつだって、一人で何でもやってきた。
誰かに頼るようなことはせずに、何でも
出来るように小さい頃からたくさんのこと
に挑戦してきたのだ。
母さんと父さんの子としてそれが当然で、
兄ちゃん2人が出来の良い人たちだったから
あたしが足を引っ張らないようにずっとだ。
心が折れそうになったことも何度かあった。
そのたび、歯を食いしばって耐えた。
あたしにとって家族が何よりも大事で、
あんなにフザケタ家族ばかりでもあたしの
ことを大事にしてくれた人たちだから、
あたしもそれに応えたくて必死に走り抜けて
きたんだ。
それがどんなに険しい道でも自分を押し殺しても
強く生きることしか出来なかった。
弱味を見せちゃならなかった。
心配させたりしたくなかった。
いつからだろう?
そう思うようになったのは。
泣かないと決めた日は、誓いを胸に
努力と戦ってきた日々は。

