あたし、全然兼ね揃えてない。

愛嬌のないあたしは度胸だけで生きてきた。

「佐藤君、ここに残ってもいいよ。

警察呼んでくれたら助かるけど。」

何度通り過ぎようと状況は変わらない。

居てもたっても居られない。

「いや、立花だけに押し付けられない。

俺も男だから、何かあっても必ず守る。」

そこ、男気感じたわ。

いざとなるといい男を出すのね。

覚えておいてやろう。

まさか、サユ狙い?

クルミちゃんや彩乃ちゃん狙いってわけ

でもなさそうだけど・・・まぁ協力出来る

範囲内ならあんたの恋路をいつか応援しよう。

佐藤君に手を引かれながら、ゆっくりと店

の前に立った。

ガードマンみたいな人が居て正直ビビった。

あたしは鉄仮面フェイスを決め込んだ。

「高校生か?」

ガードマン怖すぎ。

佐藤君なんて背筋超伸びてる。

「お前らみたいなのがね。

いや、外見で人を見ちゃいけねぇな。

招待は受けてねぇみたいだけど、

話でも聞きに来たか?」

よく分からないけど、作り笑いを

決め込んで頷いた。

女は愛嬌と度胸よ!

そんなあたしの作り笑いはガードマン

の心を許したのか快く店に入れてくれた。

暗い店の中に足を踏み入れる。

さっきとは立場が逆転して、

今度はあたしが佐藤君の手を引いた。

煙たくなるような居心地の悪い店だった。

こんな店に入ったことすらなくて、

どうしていいかさっぱり分からない。

ただ、後ろではビクビクしてる佐藤君が

居て自分だけがしっかりせねばって気で

居たのは確かだった。