何故、こうなってる。
気が付いた時には佐藤君に口を押えられて、
下駄箱の影にひっそりと息を2人して潜めた。
「・・今、行きますから・・お願いします。
早く、下さい・・・いえ、そのつもりは・・・」
途切れ途切れに聞こえる声は可愛らしい声で、
聞き覚えのある声だった。
訳が分からず佐藤君を睨むも佐藤君は気にせず、
あたしの口を押え密着24時だった。
あまり、佐藤君を意識したことはないけど、
これでもあたし一応女の子。
密着されると心臓零れる。
その声が小さくなったのを見計らって、
佐藤君に押さえつけられた手がゆっくり
離れて、佐藤君が顔を真っ赤にして謝ってきた。
「いや、いいけど・・・」
スニーカーに足を通したと思ったら、佐藤君
に強引に手を引っ張られて前のめりになりながら
パニック状態に陥った。
「ど、どどどどこに行く気だ!?」
佐藤選手理解出来ないスピード出して、
走ってますよ。
校門強行突破しちゃいましたぜ。
意味の分からない実況中継を心の中でしながら、
佐藤君の足は決して止まらなかった。
この人、さすがサッカー部だ。
体力が持ちそうにないぜ。
足が縺れながらも一生懸命動かした。
それはもう壮絶な戦いだった。
たまに電柱に隠れたり怪しすぎる動きをして。
どこの探偵のマネだよってツッコミ
を入れたくなったのを押さえてたら、
来たこともないところに足を踏み入れてた。
本当に気付かなかった。
佐藤選手もここには来たことがないのか、
よく分からずにどんどん突っ走っている状況だった。
すごく気分の悪くなるような界隈だった。
吐き気がするぐらい胸焼けを起こすような
気持ち悪いところに身震いさえした。

