普通に考えて男が女に守るなら分かるにしろ、
この大人数の男を守るという女は聞いたことがない。
ひよこはやっぱり世間知らずだ。
「おいっ、涌井」
殴りかかってきた男を軽くかわし、
腹に蹴りを繰り出す。
地面に倒れる男にもう一度蹴りつける。
「京、・・・何か機嫌悪い?」
ユウヤは転がった男に手を振り気絶したか
確認を取る。
「・・・別に悪くはないはずだ」
知らない内にどうでもいいことに
首を突っ込んでそうなひよこは今日
何を考えて何をしているんだろうか?
また、いつものようにフザケタ妄想でも
しているんだろうか。
楽しそうに笑うひよこの顔を思い出す。
「そうか?京ってあんま顔に出ないだろ?
何かあったらよく分かんないのは馨と伊織
と京だかんなー。言いたくねぇーなら聞かねぇー
けど言えるなら言えよ。
俺は京と話すの好きだかんな。」
ユウヤはナル並みの正直者だ。
絶対に嘘が吐けねぇ男だ。
単にド直球男なだけかもしれない。
それに空気を読んでないようで一番読んでる。
信頼出来る男だと俺は微かに思ってる。
「・・・ああ」
ネオンが見える街に繰り出すのはあまり
気が引けない。
こういうところは、空気が悪い。
「おうっ、慶詩が居るっ!」
ユウヤが小走りしながら金髪で派手な
特徴ある頭に向かって行く。
「んあ。ユウヤか。
丁度いいや、ナル知らねぇか?」
煙たくなるようなこの空気の悪さを
ひよこはきっと知らないんだろう。
こんなところは絶対に似合わない。
空気の綺麗なところで暮らしてこそ
ひよこな気がする。

