Hurly-Burly 【完】


あまりにも突然だった。

たまに喋ると言ってもクラスで喋ったことはなくて、

放課後に図書室で喋ることが日課となっていた。

「あの・・・」

それでも他に友達らしき人も居なくて、

「一緒にやろう。

意外と3人でやると楽しいよ。」

その笑顔が何よりも心強かった。

モゴモゴするあたしを引っ張って田中と

一緒にパス回しをした。

田中がたまにミスして落とすのを2人で

笑っていた。

多分、サユにはこういう誰にも優しい

人が傍に居てくれたらいいのかもしれない

とその時は一瞬思ったんだ。

その日の放課後も同じように図書室に

居たあたしに話しかけてきた。

田中はどうやら野球部で部活らしい。

「日和ちゃん笑うと可愛いよ。」

そんなことをサラッと言いのけてしまう

この男にサユを渡してやるものかと思った。

「あの、・・・どうして?」

あたしなんていつも何も喋らないのに、

ただただ話を聞いてるだけだったし。

「最初はさ、全然話聞いてなかったでしょ?

気付いてたんだけど、何か悔しくってさ。

絶対にいつか仲良くなってやろうと誓ったんだ。」

いきなりそう言われても反応に困った。

この男、一体何者とさえ思っちゃった。

「もう全然仲良くなれる雰囲気じゃなくて、

1年も粘ってるのにどうかしてると諦め

かけてはいたんだ。」

サユに話しかければいいものを、

あたしに何故そんなにしつこく仲良く

なる必要があったのか謎だった。

「だけど、最近は頷いたり首を振って

くれたり日和ちゃんは気付いてないかも

しれないけどさ、たったそれだけでも

何故か嬉しかったんだ。」

その懸命な努力の姿勢はある意味どんな

にカッコイイ人にさえ出来るわけじゃないと

悟った。