Hurly-Burly 【完】


星が煌めくふわふわと浮かぶ雲が気持ち良さそう

に見えてしまう。

どこに行くのかさっぱり分からずとも、ナビゲーター

馨君は目的地を覚えてるのか地図すら持たずにスイスイ

足を進めていく。

「こういうのは初めてだ。」

ふと思いついて呟いた。

習い事をしててもこんなに遅くまでは掛からなかった。

サユとのパジャマパーティーでもあまり出かける

ことはしなかった。

ただ、昔よく肩車をしてもらって歩いた夜道を

思い出すと懐かしくて笑ってしまった。

「えっ?」

ナル君が一人笑うあたしを見て首を傾げる。

「初めてでもなかった。」

父さんが口笛歌いながら歩く夜道。

あたしは安心してその肩に乗った。

あー、懐かしい。

あの時のように肩車はもう出来ないかも

しれない。

だけど、今日はよく父さんを思い出す。

「そうなの?」

ナル君がまた不思議そうにあたしを

覗き込む。

「うん、でも小さい頃の話ね。」

人に自分の話をするのはあまり得意では

なかった。

「おいっ、自販機あったぞ。」

さっきからキョロキョロしていたユウヤが

自販機を見つけて駆けだす。

「ヒヨリン、何がいいー?」

ユウヤがポケットから小銭やらを

裸で出すのを見てギョッと視線を凝らす。

あの人、昼間から気になってたけど財布

を持ってないの?

「何があるんだろうか?」

このフリープランのような感じが

どことなく面白い。

行先は決まってるみたいだけど、

たまに見えるぐらいの雲に隠れた月の

ように少しいつもと違うみんなを見た気がする。