馨君の手があたしの頬に伸びてきた。
「ひぎょっ」
ビックリしましたよ。
そりゃ、もうこんなことは滅多にありませんもん。
きゃー、馨君の手冷たいよ。
「頬が赤いなと思って。」
それをサラりと言っちゃうとか犯罪級です。
「な、長風呂だったもので。」
サユのこと言えないぐらい長風呂しちゃったさ。
サユに文句言われたよ。
でもさ、何かすごいシャンプーとかいい匂い
したしさ、使ってみたいと思っちゃったわけで。
「ヒヨリン、それ可愛い。」
いや、ナル君ほど可愛くはないよ。
あたしの部屋着を見てナル君が笑う。
サユと一緒に買いに行った薄い黄色の地で
ショートパンツに半袖のTシャツで
ゆるーい絵が描かれてる。
「どーも」
あたしのお気に入りだ。
サユに選んでもらった。
あたし服のセンスはよくない。
「寒くない?」
馨君のその紳士さに感動だ。
「いや、平気なのだけどって・・
どこ連れてく気だ?」
ひょいって横のベランダに滑り込んで
行くみんなと馨君に担がれたあたし。
「ちょっとね。」
いやー、何をする気だ!!
へ、変なことするつもり!?
あ、あたしを・・・
「あたしは煮ても焼いても食べられない
マズイ生き物なので・・・」
「へーき、何もする気にならないから。」
正直、それはどうかと思うんだが。
馨君にきっぱりそう言われちゃうとは
あたしは女の子失格なのだろうか。
はぁー、もう少し自分を見つめ直した
方が良いのだろうか?

