父さんが言うにはあたしの顔や雰囲気は
母さんっぽいらしいけど。
それはあたしが母さんみたいになりたい
だけであった、父さん似っていうのが
一番妥当らしい。
とくにあたしが笑うと父さんっぽいみたい。
あの何を考えてるのか分からない単純な
父さんの屈託ない笑顔に母さんはまんまと
騙されたとか言ってたなー。
「可笑しくもないのに笑えませんわ。」
あたしは絶対にそんなヘマはしないぞ。
「大体、ひよっちにはあの超ビューティー
集団というとてつもない人材があるじゃん。」
それは絶対にねぇよ。
「確かに、あんまり近付けない人たちだしね。
日和ちゃんは誰かと付き合ってるのかと」
「ないよ。」
それは本当にない。
心外だってぐらいない。
あたしが心外っていうよりかはみんなに
悪い気がするぐらいだ。
このちんちくりんをお傍に置くとこう
なるのかと知らせた方がいいのかな?
「そんな、きっぱりと。」
クルミちゃんはブーブーって言ってる。
そう言われてもないもんはない。
今更、あたしに恋愛感情は必要ない。
そんなもののために今までの努力を
水の泡にしたくない。
あたしの我慢一つで救われるなら、
それでいいんだ。
「日和ー?」
今の幸せがあればきっとどんなに辛いことが
あっても乗り越えていける。
「オレンジジュースで。」
グラスにオレンジ色の液体が流れ込む。
あたしが大好きな飲み物。
お家の庭にひっそりと立つオレンジの木。
オレンジ色が好きになったのはいつの日
のことだっただろうか?

