Hurly-Burly 【完】


***

Said:雄哉



気付かない内にってヤツだ。

俺がいけなかったのかもしれねぇ。

あんなに連れ回しといた挙句、

疲れてそうだったのに俺が・・手を放した隙に。

「もう、あの子ったら本当に目を放すとこれよ。」

目の前ではヒヨリンの親友であるサユリンが

ウロウロ行ったり来たりする。

「落ち着いて、美術館の中ってそんなに

広くなかっただろ?

きっと、ゆっくり見てるんだよ。」

佐藤は呑気にスタンプを押していた。

美術館によくあるヤツだ。

呑気にもほどがある。

「まぁ、確かにアイツも高校生だしな。

慌てることねぇんじゃねーの。

その内出て来るだろ。」

慶詩は左耳に髪を掛ける。

「何かあったら電話ぐれーするんじゃねーのよ。

待ってればいいじゃねーの。

暇つぶしにしりとりでもしちゃう?」

伊織はサユリンに色仕掛けをするが、

あの子が通用するわけもなかった。

伊織に靡かない女を見たのはヒヨリン以外

には初めて見た。

ヒヨリンにもびっくりだったけど、類は友を

呼ぶっていうヤツなんだろう。

この子もヒヨリンもだいぶ変わった子だと思う。

だけど、一向に戻ってくる気配がない。

あれから、目を放した後からもう30分は

経ってると思う。

空は夕日に染まってる。

「やっぱり、誰かに誘拐されたのよ!!

あの子、しっかりはしてるけどボケッと

もしてるのよ。」

ヒヨリンの友達はヒヨリンと同じような

突拍子もないことを言い放って足を止めた。