そして、サユが一呼吸置くと、
「日和はチーズケーキ以外は基本甘いもの
口にしない主義じゃなかった?」
食べても、プルーンのドーナッツとか
絶対に砂糖が少ないものとかっていう
サユは良く分かってらっしゃる。
「う、うん。チーズケーキは特別ね。」
大好きなものだから。
あたしの大好きな人との思い出があるものだから。
目を瞑ると微かに思い出す。
庭とあのチューリップの花束。
「日和?」
サユの不思議そうな顔に首を横に振る。
「えへへっ、甘いの嫌いなんだ。
ごめんね、ナル君が食べなよ。」
スプーンを持ってナル君の口に
近付ける。
「えっ」
顔を真っ赤にさせるナル君が可愛い。
お人形さんのように目をくりくりさせて、
小さく口を開けるナル君。
天使だよこの子は!!
エンジェルさんだ。
控えめにスプーンを口に入れる
ナル君と目が合った。
照れくさそうに笑うナル君が可愛くて、
「は、鼻血が・・・」
悶絶しそうだった。
鼻を押さえるあたしにナル君がすごい
心配したのは言うまでもない。
初めて食べたみんなとの昼食の味は
あんまり覚えてない。
ただ、何だろう?
いつもサユとゆったり食べる昼休み
とは違い楽しくて時間が過ぎていく
のが勿体ないと思った。
時間が止まってくれるならこの一瞬が
いいのかもしれないと思ったのはあたし
の胸の内に仕舞っておこう。

