もうすぐだからね。
次の駅に降りたらちゃんと言ってあげるから
頑張るんだ!!
「ありがとう」
その女の人の背中をずっと擦った。
あたしで役に立てることがあるなら
やれることを頑張るんだ。
「いいえ、次の駅で一回降りましょう?
それまで頑張りましょうね。」
そう言ったあたしに周りの人が気付いて、
空間を無理に作ってくれた。
「大丈夫かい?」
「気付かなくて悪いことしたね。」
いい人が居るといいもんだ。
世の中は犯罪ばかりではないんだ。
「チビこっち来い。」
見た目なんてそんなの決め手じゃない。
良いか悪いかなんて人それぞれ決めること。
金髪のライオンだってフェロモン魔人だって
賑やかダイナマイトだってキューティーエンジェルだって
クールなおっとりさんだって紳士なジェントルマンも
ちょっとネジの外れた寝坊助さんだって実は
良いヤツらなんだな。
「あの、ありがとう。」
女の人はお腹に手を当てながら笑った。
きっと生まれてくる子がどう育つか
とかはまだ考えてなさそうだよね。
それでも、優しい子になってほしい。
席を譲ったみんなは結局立ってた。
妊婦さんもビックリで向かいに座ってた
サユも窓を眺める佐藤君も口開けてた。
「いつ生まれるんですか?」
人は生まれる。
「もうすぐなの。」
それは楽しみだね。
「元気な子が生まれるといいですね。」
「ええ、そうね。」
妊婦さんとお喋りをした。
実際、電車なんて殆ど使わなかったから
こうやって電車に乗るとは思わなかった。

