クラス中からの視線にサユが得意のビューティ
フェイスでにこり微笑む。
「戯れです。」
絶対に違うぞ。
今の戯れなレベルじゃないよ。
尋常じゃないぐらい痛かったのだ。
「うふふっ、」
誤魔化した笑いを浮かべるあたし
のオデコも頬も真っ赤だろう。
「サユリン、恐るべしだね。」
ナル君が後退する。
ああ、そうした方がいいさ。
サユには近づかない方が良いよ。
確実に無傷ではいられないよ。
自覚あるのかすら分からない。
「着いたぞー。」
悪魔の声でバスの中のひと騒動は
終止符を打った。
バスの中から出ると新鮮な空気を
吸えてスウハーする。
窓は開けてたけどバスの中は
あまりいい空気だとは言えなかった。
あたしの住んでる町とは違って、
緑が多い気がする。
「ヒヨリン、こっち。」
突っ立ったあたしを手招きするナル君、
荷物を持つサユを目にする。
「さーちゃん、持ちますぜ。」
あたしこう見えて力持ち。
「えっ、平気だよ。」
そんなわけあるかー。
涼しい顔して重たそうではないか。
「ほれ、貸しなさい。」
サユのボストンバックを引っ手繰り、
荷物を集める悪魔のところに差し出した。
「力持ちな立花さん。
これがスケジュール表ね。
きちんとしっかりとアイツらの
面倒見てきてちょーだいね。」
悪魔め。
降臨しやがってからに。

