綺麗に包装された、真っ赤なワンピース。
それを手に、彼女のマンションへと向かう。

僕は、ちょっとした悪戯心で、マンションの入り口から死角になる木の影で待つ事にした。


8時15分

彼女の帰宅までもうすぐだ。彼女はいつも、8時13分着の普通電車に乗って帰って来る。

そこから、徒歩で7分。
いつも決まって、8時20分にマンションに着くのだ。

だが、時間になっても彼女は帰って来なかった。

電車を乗り過ごしたのだろうか。はやる気持ちを押さえ、また待つ。

一時間経っても帰って来ない。
二時間。来ない。
三時間。まだだ。

…遅過ぎる。

ひょっとしたら、事故か何かに巻き込まれたのかもしれない。

僕が駅まで走ろうと飛び出した時、寄り添う様に歩く人影が見えた。

街燈に照らされる人影。

…彼女だ。

白いワンピース姿の彼女は、近所でたまに見掛けた事のある男と腕を組んで歩いていた。


…違う。
似合わない。

僕は二人の下に駆け寄ると、いつも持ち歩いていたバタフライナイフを、無言で自分の首に突き立てた。

『いやぁぁぁあっ!!』

彼女の悲鳴と同時に、ワンピースが赤く染まる。

僕は、薄れゆく意識の中で呟く。

『ほらね…僕の思った通りだ』