「いたよ。」
 
 
 
 
 
 
桃乃木の手が止まった。
 
 
 
 
 
 
「・・・誰?」
 
 
 
「野球部の向君」
 
 
 
しばらく、考え込むアイツの顔は地図帳に隠れてよく見えない。
 
 
 
「俺、それ知らないんだけど?」
 
 
 
「中2から中3までかな。1年も付き合ったんだよ!純情じゃない?私。」
 
 
 
じっと私の目を見る桃乃木、なんか変な間が続く。
 
 
 
「あ、でも何もしてないよ。」
 
 
 
「ふ~ん。そっか、覚えてない、か…」
 
 
 
 
「え?」
 
 
 
「いや、なんでもない。」
 
 
 
なんて言いながら背を向けてしまった。
 
 
 
 
 
 
「・・・そっか。」
 
 
 
 
 
 
そう、つぶやいたように聞こえた。
 
 
 
気のせいかな
すごく寂しそうに見えたのは