夜になって会場に行くと

そこはまるで古い映画館のようだった。

お経が流れ焼香が始まりると言う

一連の流れが会場全体を覆っていた。

私たちのお香の順番がやって来ると

私達はまるでからくり人形のように

一歩一歩と周りの流れに逆らわず人の波に乗った。

飾られていた花や遺影を見ても

今朝感じたリアルさとは程遠かった。


遺影には

元気に笑っている楓さんの様子が写っていて

今にも


「アハハハハ」



なんて声が聞こえてきそうだった。
 
私はこんなリアルさにかけた葬儀よりも

桃乃木の隣に

私が知らないおじさんがいたことが気になった。


手を合わせ立ち尽くす。


言葉も出さず、体も動かさず。


ただ、手を合わせた。

「このたびは…」

先に焼香を済ませた

ヒカリが丁寧に挨拶をする。


私も続いて遺族席にいた

桃乃木に挨拶をすると

「…ありがとな。」

彼はそう返事をした。

今朝よりも覇気が無い。


「…桃乃木!!」


会場全体に聞こえるような声を私は張り上げた。


「元気出せよ!」


桃乃木は、

とても悲しそうで寂しそうな顔をしながら


「おぅっ!?バカだなお前。」

 
と言い、笑った。