私は、音楽室を飛び出した後、池に向かった。



由紀音「こんな小さな池に、龍なんか居るのかな?」

私は、呟き池を覗き込む。


由紀音「底が見える………」

山崎「龍は、湖に居る妖怪よ。」

後ろから、いきなり声を掛けられ、びっくりして振り向くと、山崎先生が立っていた。


由紀音「どうして、付いてきたんですか?」

山崎「桜の木の下の悪霊が、気になってね。私じゃ、祓えないし。」


由紀音「えっ?本当に居るんですか?」

白守も、本の憑喪神達もそんなこと言って無かったのに………

山崎「何度か、微かに邪悪な気を感じたわ。一瞬だけど、とても邪悪な気を。」

私は、山崎先生の言葉に寒気を覚えた。
私は、悪霊との闘いが得意では無い。
悪霊との闘いが得意なのは、弟だ。



由紀音「先生、その気は霊気でしたか?」


山崎「………霊気とも、妖気とも違ったわ。どちらかというと、霊気に近かったけど。」


霊気に近い、霊気でも妖気でも無い邪悪な気………


私は、唇を噛み締めた。
そんなものは、一つしか考えられない。
悪霊と化した、精霊だ。

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