言うだけ言って、わたしは駆け出した。

顔が火照っているのが分かったからだ。

走るわたしを見て、コムラは笑顔で手を振ってくれた。

―だから知らなかった。わたしが去った後、コムラに話しかけてきたモノの存在に―

「随分、可愛い子だね」

声をかけられた途端、コムラの表情が険しくなった。

「…お前が導いたのか? キムロ」

森の木の陰から、黒い髪に黒い瞳を持つ少年が出てきた。

意地悪そうに微笑む彼の表情に、コムラの目がつり上がる。

「まさか。何にもしていないのに、あの子はお前の領域に踏み込んだのさ。こっちが驚いているぐらいだ」

黒いTシャツに黒のジーンズ。闇を思わせる彼は、肩を竦めて見せる。