「……彼女か?」
男性の声がしてシュウの体が少しこっちに傾く
「うん、…そう」
傘を下げ顔を隠したままゆっくりと会釈する私
男性はしばらく黙っていて
私の心臓は跳ね上がりそうな程、躍動していた
男性がまたシュウに向けて口を開く
「……お前は知らないだろうが、実は……あの年に娘が行方不明になってなぁ……」
独り言のようにつぶやく男性の声は雨に吸い込まれたように聞き取り辛く、男性の疲弊した様子が感じ取れた
(………パパ!!)
私の叫びは声にはならなかった
胸がいっぱいになり、傘を投げ捨てたい衝動に駆られたが結局はそれも出来なかった


