でもやっぱり仕事では

顔を合わせる。

そしていつも通りたろうの車で

送ってもらう。

少しぎこちなかった。

繋がれない手…

側に居るのに触れられない…

でも全て私が選んだ道なのだと

心に言い聞かせていた。

「バイバイ」

私が車を降りようとした時

「寂しいな…」

たろうが小さい声で言った。

「えっ!?」

たろうの弱音を聞いたのは初めてで

もう一度聞き返した。

「いつもやったら

一緒に車降りてななの家

行ってたのに

家の前でバイバイって

何か寂しいな」

声は元気なのに顔は寂しそうだった。

差し出しそうになった手を引っ込めて

「そやな…」

それ以上の言葉が出ない。