ピクリとも動かない後藤からは頭を中心にだんだんと血の海がこちらへと押し寄せてくる


とにかくいま写っている状況が怖かった

はやくこの場から逃げ出したくて仕方がなかった

はやく『普通』に帰りたくて仕方なかった



後藤の心配もしつつもやはり一番気になるのは夏希.


瀬戸は苦しみ咳き込む夏希の肩に手をやり、言葉で回復を祈った


「大丈夫か?!」

夏希はかすれた声で うん とだけ呟くと、瀬戸は今までよりも一番大きな溜め息をつき、夏希の右手を血のついていない左手で指を絡ませ、強く握った