「俺にも話せない?」

「いや、聞いてくれるか?」

「もちろん」

「由佳里は…俺の妹。
って言っても血の繋がりはないんだ。
あいつの親父と俺のおふくろが再婚してさ。
互いに連れ子で…。
その時、俺が高1で由佳里は中3だった。
由佳里を溺愛する父親と、その父親に気を遣うおふくろ。
ま、おふくろはそいつにメロメロだったから仕方ないんだけど。
新しい家に俺の居場所はなくて…。
逃げ出したくて俺はアメリカに留学を決めた。
でも一年たって帰国したら…俺と由佳里は同級生になってしまった。

妹と同級生ってのもなんとなく嫌だったんだけど、俺を見る由佳里の視線に違和感を感じてさ。
由佳里は俺を兄としてではなくて、男として見てる事に気付いた。
そうなると一緒になんて暮らせないだろ?

進路を決める時に俺は地方の大学を考えた。
揉め事なく家を出る言い訳になると思って。
けど親に激しく反対されて。
俺も由佳里も地元でそこそこ有名な大学を受験するように言い包められた。

結局、受験はしたけど 俺は白紙で答案を出したんだ。
そして一浪して家を出た。
そりゃ親は大反対だったけどな。

幸い別れた父親が面倒みてくれて、予備校の一年は親父の家で過ごした。
『夏木』は親父の姓なんだ。