Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第三話

「何故って?それは…」


しばらくの間、再び二人の間に沈黙が続いた。だが、その少年から受けた質問に黙り込んでいた真琴に対して、じっとその少年は視線をそらせることなくその答えを待ち続けいたので、ふうっとため息をつくと、真琴はその照る照る坊主が吊されている場所まで行って、それらの一つを右手で握りしめながら、その少年の方を振り向いていった。
「これは、照る照る坊主じゃないの。晴れどころか、雨が降りますように、ってお願いしているの。…『降れ降れ坊主』なの。」
「降れ降れ坊主?」
「そう。だから、全部逆さまに吊してあるでしょ?」
成程と、その少年は思ったのと同時に、その照る照る坊主に感じられた妙な違和感の謎が解けた。しかしそれによって、誰もが頭の中に思い浮かぶであろう、新たなそれに対する疑問にその少年もぶつかった。
「何故、雨が降ってほしいの?」
その少年が真琴にそう言うと真琴は、窓越しに映る、未だ降り続く薄暗い雨景色を遠い目で眺めながら静かに語り始めた。