Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第三話

真琴が、少し頬を膨らませながら、「力作」をぎゅっと抱きしめながらその少年にそう言った。
しかし、その少年から返ってきた言葉は、真琴が予測していた物とは違った。
「そんな事ないよ…」
えっ、という表情で、真琴はその少年の方を向いた。相変わらず、その少年は無表情な、人形のような顔をしていた。しかし、その言葉には、短いけれど、真琴の心を温かくしてくれるような、何ともいえない響きがあった。


-そんな事ないよ…-


真琴がふと気づけば、横からその少年が純白のハンカチーフを差し出していた。
自分でも気づかない内に、真琴は両目から涙を流していた。
「…ありがとう。」


「…ねえ、君?今から私と一緒に行ってもらいたい場所があるんだけれど…迷惑じゃなければ。一人では行く勇気はなかったけれど、君となら…」
そう言って、その少年を真琴が連れていった所とは、この街にある、大きなデパートだった。
「…ここが、一人では来る勇気のなかった所?」