【短編】私vs国連~大怪獣の足元で~

 そんな、私の説明に。

 新聞屋は、少し複雑そうな顔をした。

「……その、つまり。
 博士は、私たちの町を実験台にして、ヒト様の感情を左右させるような……
 ある意味、洗脳みたいな、とんでもない研究をしていたと……?」

「いやぁ、すみません。
 何しろ国連軍でも遂行出来ない、全世界完全平和へのための、第一歩。
 理想社会への、必要な貢献だと考えていただければ、嬉しいです」
 
 電波が、まだ効いているはずなのに。

 何だか暗い顔をしている新聞屋の背中をばしばし叩いて、私は笑った。

「おかげで、この町の人達ってとても幸せそうじゃないですか。
 私の怪獣が、毎朝早く吠えても、困らないみたいだし。
 新聞屋さん。
 例えあなたが配る朝刊が。
 お昼を超えて届いても、誰も文句は言わないでしょうよ?」

 そんな私の言葉に、自分の仕事を思い出したらしい新聞屋が、あわててスクーターに乗って、出て行った。

 やれやれ。

 だから、そんなに慌てて配達しなくても大丈夫って言ったばかりなのに、なぁ。

 戦車が通って、でこぼこになった道で、コケなきゃいいけど。