【短編】私vs国連~大怪獣の足元で~

「今までも、精神に異常をきたすほどの、強い不安や怒りの感情を。
 精神薬の内服や、簡単な手術で抑えることは出来たんですが。
 私は、もっと手軽な感覚で。
 特に精神科とは関係ないほどの軽い。
 けれども。
 皆が必ず持っている、いわゆる『負の感情』っていうヤツを解消できないかって考えたんです」

「……はあ」

「それで、人口もそんなに多くなく。
 手ごろなこの浜梨に引っ越しして来てから、水道や、スーパーの食料品こっそり薬を混ぜたりして、町の様子を観察していたのですが……」

「……」

「最近になって、どうやら。
 一定の周波数の電波でも、薬を内服するのと同じ……いや、それ以上の効果が出るのが判ったんですよ」

「もしかして、博士の家のテレビが壊れたのも……?」

「ええ、研究中につい、強い電波を流しすぎ、勢い余って、ぼんっ、と」

 そんな、私の説明に。

 新聞屋は、黙って、怪獣の住処の近くに立っている私設電波塔に目をやった。

「そうそう、それです。
 さっきのボタンは、それから『思いやり電波』を流すヤツだったんです。
 その電波によって、私の酷い乗り物酔いに同情した国連軍が、無事。
 何事もなく、帰ってくれました」