"ガラ-"




「あら壱。今日は遅いのね」


「ああ。ちょっと先生に呼ばれてて」


「何か悪い事でもしたの?」


「違うよ。球技大会の事」


「そう、若菜さんは?今日は一緒じゃないの?」


「さっきまで一緒だったけど、……帰した」




小学校の頃、凛と別れてから、俺の唯一ゆっくり安心出来る場所と言えば母さんの横だった。


だから母さんは、俺に何かあると必ず聞いてくる。





「壱……何かあったの?」


「いや、別に。たいした事じゃないから」


「たいした事じゃないなら、何でお母さんの目を見ないの?……凛ちゃん…ね?」




俺の体は正直だ。


凛の名前を聞いて、身体が反応したのを自分でも分かる。