主任がアメリカに行ってから、2ヶ月過ぎた。


見送りには行かなかった。

保安課はいつも通り。
いつも通り、みんな相変わらず。


「会いたくなったら会いに行ける」
「離れて生活してても、俺達と主任が変わる事は絶対に無い」

みんなはそう言って笑う。

そんなみんなが、羨ましい。


いつも毎朝、筋トレをやってた主任。
うるさいくらいに結婚を申し込んできた主任。

マンションに帰っても主任は馬鹿ばっかりやってて。
家でも保安課でも、主任の普通じゃないペースに巻き込まれて。


いい加減にしろって叫んでた事すら、懐かしくて…物足りなくて…淋しいよ。


「東、今頃何してるかなぁ」

猿股が、応接スペースでコーヒーを飲みながら呟いてる。

ホントだよね、主任…今頃何して……。


「って!何で猿股さんがここに居るの?!」
何を自然にティータイムをエンジョイしてるんだっ!

「俺!朝から居たじゃないですかっ!」
…そうだった?
「休みだから綾美さんに会いに来てましたよ!」
頼んでないし。

休みなら自宅で休めよ。

「ははは!猿股さんNO眼中だ!」
「心のオアシス、水不足だね」
「所詮、蜃気楼的存在ですね」