「いよっしゃぁ~…つ、いたぁ~」

紙袋を抱えて、珍しく屑(クズ)はぜぃぜぃ息をきらせていた。
スポーツマンシップに乗っ取ったと見せかけた運動部が大キライな運動音痴の屑でも、『トッテオキ』の為なら走る事もあるらしい。

膝に手をあて汗を拭っていたが、ふいに顔を上げて、ニンッと笑った。
屑が見たのは境内だ。

ここは、少し高台にあるさびれた神社。
人なんてそうそう来ないこの神社を、屑はかっなぁ~り気に入っていた。
「ふぅ……そろそろかな」
そう言って賽銭箱の前の階段に腰を下ろした。
鳥居の向こうに広がる、町並を一望出来るのはこの場所だけだ。
……と思う。

ふいに空を見上げる。
うっすら落ち始めたらしい。
「さぁ来いこのヤロウ」
誰ともなく言う。
すると……

視界いっぱいのピンクレモネードと黄金のコントラスト。

どこか蛍光めいたピンクと眩い金に照されて、袋から香ばしいにおいの焼芋を取出して真っ二つに割った。
「この瞬間を待っていたッ!」
セリフを吐いてガブリッと芋をかじる。
「ふがっ…ほかっ……んっ」
満面の笑みを浮べて、大好物をかじりながら見る夕空はまさに…


「トッテオキぃ~♪」