彼岸花の咲く頃に

しかし、俺の説明は既に右から左。

姫羅木さんの頭の中は、八割方きつねうどんに支配されていた。

「何と…人間の発明品も捨てたものではないのぅ…そんなにお手軽に、きつねうどんが食せるようになっておったのか…」

よかった。

何とかきつねうどんで手を打ってもらえそうだ。

何て安いお稲荷様だろう。

「よし!」

姫羅木さんがポンと柏手を打つ。

「ならば店まで急ぐのじゃ。事態は急を要するぞ、千春!」

白くか細い手が、俺の手をしっかりと握り締める。

…あんなに強くて勇ましいお稲荷様なのに、こうして手を握ってみると、しっかりと女の子の手だった。