彼岸花の咲く頃に

上空から音もなく舞い降りてきて、彼女は俺の方に歩み寄ってくる。

しゃなり、しゃなり。

優雅な足取りもいつも通りだ。

「どれ…千春、傷を見せてみぃ」

俺の頬に手を添える姫羅木さん。

「え…ええよ…大した事ないけぇ…」

「馬鹿を申すな。鼻が折れておろう。男前が台無しじゃ」

そう言って彼女は、俺の鼻に触れる。

「あ!触らんでや!痛いけぇ!」

患部に触れられる事で走るであろう、痛みに身を竦めたが。

「…あれ?」

予想していた痛みはなかった。

それどころか、鼻骨の骨折は一瞬にして癒え、鼻血も止まっている。

「痛ぅなかったであろ?」

姫羅木さんは目を細めた。