あの日 傘を持ち合わせていたら、彼女とは まだ続いていたのだろうか、わからない。
いつも通り、傘など差さず、彼女への気遣いなど無く 結果は同じだったのではないか。
正直、彼女からの久しぶりのメールに心のときめきは なかったのだ。 彼女からのメールであることを確認したあと、読んでいない。  実は気になるメールがもう一つあったからだ。

「私は、山梨在住の32歳です。昨日まで、社長令嬢でした。 父の会社が倒産しました。今週末まで、500万必要です。どうか、助けてください。」 今時、珍しくもない迷惑メールの類であろう。 ただ、差出人名に心動いた。玲子だ。昭和の終わりの年 小悪魔として私の目の前にあらわれ全てを持ち去ったあの玲子だ。 礼子でも、麗子でもない、、、。年齢も、状況も 全て符合している。
昔以前、探し続けても見つからなかった糸口が 今、目の前にある。

「俺、静岡在住、46歳、、以前、山梨にも住んでいました。会えませんか?」
返信してすぐ、 返事が着た。

「明日、会えませんか?ポイント使わせたくないんで 待ち合わせ場所、、次でお願いします」
同じだ。 A子の時と 同じ始まりを再現しようとしている。

「わかった、箱根でいいですか?、、、、」
約束が成立した。  もう、サクラでも詐欺でもいい、、、
会いたい。