家に入ると、室内の中央に家主がいた。

「千与、」

不機嫌を隠しきれない千与の父が胡座をして娘の帰りを待っていたのだ。

「…申し訳もございませぬ。」

千与は父に駆け寄り、土下座をする。

「…そなたはもう子供ではあるまい。されど親という生き物は子が老婆になろうとも心配で仕方のない性分なのじゃ。」

「…はい。」

「面を上げよ、千与。」

ゆっくり視界を床から父に移すと、穏やかな顔をしている彼女の父に、千与は安堵感や違和感などを感じていた。

「わしが伝えたいのはただひとつ…縁談じゃ。」