体をねじって、兄に向かい横向きになる。その太股に、そっと腰かけた。

顔は正面で、間近で、見つめ合う。視線の糸が絡み絡まってしまいそうだと思った。

きっと今、アイサインの糸電話は回線が混雑中だろう。だからお互いになにを考えているか、目で判断できない。ずっと見慣れてきた目なのに。

兄の思考が読めない。同じように、兄も私の思考を読めていないかもしれない。

「ねぇお兄ちゃん」

「なに?」

「お兄ちゃんは、どうして私に、キスしたの?」

だから言葉を交わす。

「好きだからだよ」

「どうして好きだと、キスをするの?」

「言葉で伝えきれないものを、伝えるためかな」

「伝えきれないものを?」

人間の気持ちは、言葉という包装紙でくるむには、大きすぎるのかもしれない。

「お兄ちゃん」

「ん?」

「どれくらい、私のこと好きなの?」
   、、、
「……許してくれるなら、教えてあげるよ」

だから、兄は、

「……いいよ。許す」

私に、キスをしてくる。

優しい、唇を何度も触れ合わせる、あやすようなキスだった。