錘のついた鎖で地上に引きずり下ろされ、両腕を押さえられたまま背中を踏んづけられて、翼を引きちぎられた。そんな気がした。

地べたの味はそのまま、兄のキスの味。今までずっと空から眺めていたのに、いざ足を着いてみた地上は、想像よりも荒々しかった。

私は兄のことが好きだったし、姉よりもなついていた。母や父より一緒にいる時間は長かったし、一緒に出掛けることも多かった。

兄は、優しかったから。

それらすべてが、兄にとって、そういう感情から起因していたかと思うと――もうこんがらがる。

好きな人と一緒にいたい。それくらいは、私の年齢でも理解できる。

具体的に恋心を抱いたことはないけれど、少なくとも、兄と一緒にいる時の私は、まるで波間に漂いながらまどろむように、安らげていた。

私だって、兄が好きなのだ。

けれど、兄のいう好きと、私の抱く好きとは、別次元だと思う。

私はもう、天使じゃないのだ。