クラクラした。そしてそのクラクラは、あたしに禁忌をほのめかした。

あの男が悪い。
あの男が悪い。
あたしにキスなんてするから。

止められない興奮のせいにして、あたしは天使の頬にキスをした。甘くはなかったが、少女の香りがした。本当に桃のようだ。

「かわいいのは、アナタのほうよ」

「……」

「かわいくていい子。あたし、アナタさえいてくれたらどんなことでも乗り越えられるわ」

「そうですか。ありがとうございます」

一世一代の告白にも等しい思いだったが、天使は特別表情を変えなかった。

ただぼんやりとあたしを見て、なにかを言いかけて、つぐむ。

そして一度だけ、顎を鎖骨につけるように、頷いた。

本当に、なんて素直でかわいいのか。

あたしは完全に夢心地だった。