刀の柄に、手をかける。
すっ、と。
身体の中心に、涼しい風が入っていくような感覚が、あった。


(……なんだ?)


悟志が、心行刀流を学ぶようになって、2年。
思うように動けなかった身体は、毎日欠かさず素振りや技を繰り返すことで、徐々に動けるようになった。

それでも。
まだ、心のままに刀を重ねることは、できなかった。

それが。

まるで、腕と刀が一体となったような、感覚。
まるで体が覚えているかのように、習ったばかりの技が、繰り出せた。
飛竜剣。
そのあまりのスピードに、相手が受け切れずに、体勢を崩す。


「すげえ」


思わず、道場に声が上がる。
刀を戻し、礼の姿勢を取りながら。
悟志の心に湧きあがってきたのは、両手で刀を振れる喜びだった。