「っあつ!」


煙草の灰が手にかかり、思わず煙草が手からするりと逃げ出した。

まだ半分も吸っていないのに。舌打ち混じりでポケットからセブンスターを一本取り出して、残り少ない煙草のケースに一緒に入れておいたジッポを軽快に鳴らす。


煙草から吸い込んだ白いものは、私の肺を埋め尽くし、そして白いまま私の口からふわりと舞う。



私の体をぐるりと一週。
体の中に閉じ込めたら、今目の前にある煙草のようにゆらゆらと空に舞い上がれないだろうか。


フワフワ浮いて
ゆらゆら揺れて
さらさらと流れて


あの高く黒く重たげな空の一部になって。


重たい気分の私にはぴったりな空じゃないか。


雨でぽつぽつと地を刺して、地は血を流すように濡らし、溢れ、そして地を揺らすほど落としてやろうじゃないか。


それは大きな固まりになって、この地を侵略する程になるだろう。


地を突き動かす程のそれを、今度は切るほどに鋭い風。

地も雨も真っ二つ。


そしたら今度はその上のちっぽけな鉄のかたまりたちは転がるように倒れていく。


ぐらぐら揺れて。
がらがら崩れて。
ぼろぼろと落ちる。


そしたら今度はその中のちっぽけなくせに偉そうな人間と呼ばれる動物たちは逃げ迷う。


おろおろ焦って。
ばたばたと走って。
ばしゃばしゃと掻き分ける。


飛ぶことも出来ない癖に飛ぼうとする。泳げない癖に泳ごうとする。潜れない癖に潜ろうとする。


何者にも頼らない様に気高く生きてきて、だけど何者かに寄り添って無様に生きながらえようとして。


偉そうな癖に弱虫な馬鹿なそれらは、恥も捨てて泣く。

それを見ながら笑う私。
それを感じて惨めになりつつも、だけどすがるしかないんだ。