探偵バトラー ~英国紳士と執事~

「ではロシュツ卿。立ち話も無粋だ。早速、我が屋敷に案内しよう」

 絵理の父はにやりと笑ってそう言い、車の方へ歩き出した。オレと絵理もそれに続く。

 絵理の父の声は騒がしい空港内でもよく通る。加えて、見るからに金持ちそうな一行だ。

 嫌が応にも人々の視線を集めてしまう。

 そんな状況で「ろしゅつきょう」と連呼するものだから、すれ違う人々は皆一様に怪訝そうな顔つきでこちらを見やり、目が合うとそそくさと足早に去って行く。

 何この羞恥プレイ。

 何もやましい事はしていないはずなのに、通行人に変態様ご一行と見られているようで非常に居心地が悪かった。

 そんな人々の視線に気付いているのかいないのか、絵理の父も絵理もお構いなしに「ろしゅつきょう」を連呼する。

 当のロシュツ卿はというと、終始笑顔を崩さぬまま、時には通行人に笑いかけていた。