探偵バトラー ~英国紳士と執事~

 目の前にいるのは大事な客人で、非の打ち所のない紳士だ。

 日本語にした時に多少おかしな誤変換をしやすいからといって、そのイメージで彼を見るのはいくらなんでも失礼だ。

「まだ見習い故、至らぬ所はあるかと存じますが、これから宜しくお願い致します。ロード・ロシュツ」

 おかしな誤変換を脳内でしないよう、敬称は英語でつけることにした。

 そんなオレの様子を見て、絵理の父はにやりと笑ってこう言った。

「陣よ。そう堅苦しくせずともよい、と先ほど言ったばかりであろう?

 ロシュツ卿。そういう訳だから、陣にはそのように接してやってほしい」

 一体何が「そういう訳」なのだろうか。

 絵理の父の言葉の意味は、オレにはさっぱり解らなかった。

 話を振られたロシュツ卿はというと、オレの方をちらりと見て、意味ありげな笑いを浮かべた。